白秋生家記念館の元館長によるエッセイ集。鶴丸哲雄さんの聞き書きで、西日本新聞に連載された記事を加筆してまとめたコーヒーブレイクに相応しい読みやすい一冊である。
白秋の生涯を語る章と元館長の大塚鉄雄さんご自身の来し方を語る章とが交互に展開される。大塚さんは音楽家で、白秋作詞による童謡を愛し、聾唖児童学校の音楽教師を務められた。障害を抱えた子供たちが白秋の童謡を懸命に歌う姿も描写され、言葉の力、詩歌の力を改めて認識させられる。
本書には、白秋にかかわる人々、および白秋の筆になる装幀や挿絵を、口絵としてカラー図版で数多く掲載している。カバーの絵もその1枚で、あっさりした洒脱な線画だった原画に、色と紋様を施してみた。