
この本は、アジア図像学の研究者・杉原たく哉氏の遺稿集でもある。
原稿が送られたおり、内容の面白さに、仕事であることを忘れて読み耽った。二部構成で、第一部がエッセイ風味の読みやすい連載スタイルのコラム、第二部が論文選になっている。コラムでは安土城「モン・サン=ミシェル祖型」説という奇想天外な、しかし説得力のある説が語られていたり、また論文選では、聖剣好きなら興味を抱かざるをえない「七星剣の図様とその思想」という古代天文学に関わる学説が展開されている。
造本設計者や装丁家は本が世に出る前の最初の読者であるわけだが、改めて自分の仕事の役得をありがたく思った。