中国政府の検閲下にあったのか、ビジュアルな資料がひとつもない。ネットで調べれば炭鉱関係の写真は大量にヒットするが、安源のものを確実に選別する手立てがない。本書のサブタイトル「中国労働者階級の栄光と夢想」というフレーズを繰り返し呟きながら、老いた炭鉱夫の像を造ることにした。
人生のほとんどを過酷な労働環境で過ごし、国家献身の誇りと労苦を顔に刻みつけた老鉱夫。その相貌を想像するのは、私のような甘い人生を送ってきた人間にはなかなか難しいことで、何度も造り直し、息抜きにミニチュアのつるはしを造ったりしながら、入稿の締切日が来たので、そこで終了した。
大げさではなく、「締切は創造の母」だとつくづく思う。締切がなければ、納得できるまで延々と弄り続けることになり、作品が世の中に産まれ落ちる日は来ないし、私は食い詰めることになる。
書肆データ
- 副題:中国労働者階級の栄光と夢想
- 著者:于建嶸
- 訳者:横澤泰夫
- 発行:集広舎
- 発行日:2014年03月16日
- 印刷製本:モリモト印刷
- 造本設計:玉川祐治
造本データ
- カバー:コート 四六/Y 135k
- 帯:カバーと同版
- 表紙:ボーン アイボリー 四六/T 22.5k
- 本扉:コート 四六/Y 135k
- 見返し:ビオトープ GA ボルトブラック 46Y 120k
- 本文紙:メヌエットライトクリーム A/T 43.5k