五〇〇ページを超える大部の本だが、何より時間がかかったのは装画である。
幼少時のアジャ・リンポチェ氏のお写真がとても愛らしく、どうしてもこの写真を使いたいと思ったものの、傷みが激しいうえに、モノクロ手彩色だった。
まずは背景の模様の細部まで徹底的に修復し、手彩色によるケバい色彩を取り除いて元のモノクロ写真に戻す。そのうえで、AIで彩色。この状態でいったん監訳者の三浦順子さんに確認していただき、当時の衣裳や式典に詳しい人の指示に従って、背景、帽子、顔、服、前垂れをそれぞれレイヤーに分け、各レイヤーの色合いを微修正する。そうしてまた確認していただき、再度の微修正。さらに確認していただいて再々度の微修正、その繰り返しでようやくここまで復元できた。
写真の復元というより、もはや絵を描いているに等しい有り様で、ものすごく手間がかかったが、とても面白かった。