この本の制作進行は、当時としては異例なケースと言える。訳者の小池美和さんがネットサービスに慣れていらっしゃったおかげで、初校から念校にいたるまですべて Google Document 上でやりとりし、紙出力することなく、原稿配送のタイムロスもない、完全なペーパーレス作業で入稿まで完走できた。
著者、訳者、編集者、装丁家が一度も顔を合わせることなく、一冊の本ができあがる──。かつては活字をひとつひとつ組んで版をつくり、文字どおり「組版」と呼ばれる作業が行われていたわけだが、写植の時代を経てデジタルフォントへ移行した現在、造本設計を含め、デザインワークとインターネットの親和性の高さを身をもって実感させてくれる仕事だった。