帯と重ねたカバーの展開図を載せてみた。書影も同じく帯を重ねた。
カバーと帯に同じ装画を使って、一見すると帯がないように見える作り方を、私はけっこう好んでいる。帯という存在を消してしまいたい願望があるのかも知れない。
基本的に欧米の書籍には帯がない。そのおかげで彼らのカバーデザインはとても自由だ。日本の書籍のデザインが帯のせいで制約を受けているのは事実であり、一方で、欧米にはない帯デザインという本を飾るためのアドバンテージを私たちが持っているのも事実だ。
本書は六〇〇ページに迫る大著であり、テーマも重厚だが、本そのものも重い。
通常、段組を増やすとページ数を少なくできるが、著者のご要望で一段組にした。仮に二段組で設計したとしてもページ数はあまり変わらなかっただろう。
何しろ改行が少ない。文字がページをみっしりと埋め尽くし、読む本がなければ電話帳さえ読みかねない活字中毒者には垂涎の一冊である。
内容とはまったく無関係だが、厚みといい、本文紙にあふれかえる怒濤のような文字群といい、いかにも物質的でオブジェのような書物にこそ、読書家ではなく、愛書家を自認する人たちは、惹かれてしまうのではないだろうか。