十人十色

十人十色

 近年、アラビア数字(算用数字)を使った縦組み書籍が増えてきた。おもにハウツー本や軽めのエッセイ集などでよく見かける。組版オペレーターにはそのほうが楽だろうが、機械的に組んでいると「十人十色」が「10人10色」になってしまうので、諺や慣用句くらいは辞典どおりに記述してほしいものだ。

 小説や評論では、今もなお、漢数字を使うのが一般的だ。
 ところで、漢数字には二種類の用法があるのをご存じだろうか。ひとつは「記数法」と言って、たとえば「二百万光年」を「二〇〇万光年」と書く。桁の漢字は「千、万、億、兆」しか使わない。アラビア数字とともにこの記数法による漢字表記も年々増えてきて、いまや主流の表記法と言っていいくらいだ。

 もうひとつの用法は「記名法」である。記数法と違って、桁の漢字を惜しみなく使う。「夏目漱石が生まれたのは西暦一千八百六十七年である」といった具合だ。明治や大正の頃ならともかく、現代の書籍でこれをやるのは厳めしすぎるし、かえって読みづらい。

 この二つの表記法の良いとこ取りはできないものか。
 そんな虫のいいことを考えた人は他にもいたようで、一橋大学社会学科編『漢数字表記について』と日本エディタースクール編『標準編集必携』にその解答があった。

 やや煩雑な規則ではあるが、理に適っているので、私が気づいたことも加え、下記のPDFにまとめてみた。このファイルは仕事でも使っていて、著者に送ると例外なく「この方法でやってほしい」との返事がもらえる。機械的にはできない作業なので(いずれAIがやってくれるだろうが)、校正者にも送るようにしている。
 これまで二度改訂し、今後も何か気づいたら改訂していくつもりだが、関心のある方はダウンロードのほどを。